【ネタバレなし】四畳半タイムマシンブルースはやっぱり面白かった話【森見登美彦】
こんにちは、たちつてとです。
タイトル通りです。個人的には、最近笑ってないな...って思ってる方に勧めたい。
笑える小説ないかな...って方にも勧めたい。
僕は、2週目だったんですが、ちょっと感想を書いてみようと思い記事にします。
以下、魅力をお伝えするために台詞の引用はありますが
どんな状況やねん!となるだけで、どんなストーリーかすらわからないと思います。
毒々しい地の文
「電気風呂でぴくぴくしてたら、もっとキモチワルイと思いませんか?」
「たしかにキモチワルイことこのうえない」
「というわけで早く行きましょうよ、師匠」
「いや、待ちたまえ。ヴィダルサスーンを取ってこよう。」
驚くほど中身のない会話を終え、樋口氏と小津は遠ざかっていく。
※ヴィダルサスーン=シャンプーの名前
基本的に「私」の視点で物語は進みます。単純な状況説明の文章はもちろん、
「私」の心情も地の文には含まれるんですが、これが面白い。
ぼけっと読んでたら、めちゃくちゃ辛辣な突っ込みが入るんですね。
物語(≒登場人物の掛け合いと流れ)として面白いのはもちろんですが、
地の文の方で時々!?って意表をつかれるような表現が出てくるところが
この四畳半タイムマシンブルース、ひいては森見登美彦さんの好きなところです。
なお、この毒づきはほぼ共感できます。
リズミカルな地の文
この世で何が不愉快といって、上半身裸で汗まみれの男児大学生がふたり、
四畳半で睨み合っている情景ほど不愉快なものはない。
※ふたり=「私」と小津という登場人物
大変読みやすいです。一文の句読点までの文字数が少ないのか、
「私」の心情が多く語られるからかわからないんですけど、すごく読み進めやすいです。
「私」がリズミカルに毒づくさまは、本当に面白いです。
よくもまあ、ここまですらすらと文句を並べ立てられるな...と感心します。
ちなみに、毒づきの対象は自分も含まれます。
ちょっと賢い言い回しが癖になる
なにしろ人数が多いため、全員で乗りこむには慎重な力学的配慮が必要である。
森見登美彦さんは京都大学出身だそうで、だからというわけではないでしょうが
文章には日常生活ではあまり使わない単語が盛り込まれます。
↑引用の文章なんかわざわざ「力学的配慮」なんて言い回しをしなくても、
読者には状況は伝わります。そこをあえて、「力学的配慮」というワードを取ってくる
のがセンスというものなんでしょう。「四畳半タイムマシンブルース」ではありませんが
侃侃諤諤(かんかんがくがく)なんて言葉、初めて知りましたよ...
納得の最後
タイムマシンという、現代科学ですら取り扱える段階ではない=科学的な正解がわからない
内容が含まれます。SFガチ勢とか量子論ガチ勢の方は、話のオチというか最終的な論理に
納得のいかない方もいらっしゃるかもしれません(し、納得される方もいらっしゃるかもしれません)。
しかし、僕はこの話の収束のさせかたはけっこう好きで、大変ポジティブなものを感じます。
ほんの少しだけ書きますと、
絶対的な時間軸というものが一つあるわけではなく、
「時間」というある種の流れに沿って、
自分たちが経験していくものが全てであり中心なんだ。
的なことを思いました。話の中の最たる例が、リモコンであり、ひいては私たちであると。
ここまで書いて、僕は学生の時、ろくに国語の勉強をしなかったことを思い出しました。
もう一つだけ痺れたこと
上述の、話のまとめ方が好きな一方で、もう一点好きな部分がありました。
ネタバレになるので書きませんが、やっぱりこの一言で終わるんだなっていうのは
わかっていたんですけど。ここまでしっちゃかめっちゃかやって、
それでも予定調和に物語が終わる、その最後の一言がリズミカルでちょっとロマンチックで...
メタ的な話、その後の解説とかもないので、その最後の一言が本当に最後の文章になっています。そこでの読了感、余韻が素晴らしかったです。
以上、感想でした。
少しでも気になった方は購入してみてはいかがでしょうか?
僕が発売を知った直後に買いに行った本で、やっぱり面白かったなという感想でした。
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個人的には、紙が好き。理由はディスプレイ的なものを見なくて良いから。
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